『バフェットからの手紙』という本を読むと、バフェットの投資手法の変遷を知ることができる
単に割安な株を買う
バフェットは初期は、単に割安になっている株に投資するという、平凡なバリュー投資の手法を用いていた
これでも平均以上の投資成績を収めていたものの、時おり大きな失敗をすることもあった
というのも、割安であることのみを重視し、3流の企業の株も買っていたからだ
バフェットはバークシャー・ハサウェイという企業を経営しているが、ここは元々は繊維業を営んでいた
割安になっていたから買収したのだが、これが大きな失敗となった
アメリカの繊維業はすでに斜陽になっていたからだ
人件費が安いアジアなどから安価な繊維が輸入されるようになり、いくら努力しても利益が上げられる産業ではなくなっていた
日本の製造業の衰退と同じ構図である
バフェットは「経営者は優秀だったし、労働者たちも賃金が低めだったにも関わらずよく働いてくれた」と振り返っている
それでも産業そのものが構造的に衰えていると、どうにもならないのだ
これについてバフェットは、「騎手がいくら優秀でも、乗っている馬がダメならうまくいかない」といった例え話をしている
騎手が経営者で、馬が業種にあたる
優秀な経営者も、稼げる業種の企業を指揮しない限り、成果は出せないのだ
というわけで、バフェットはしばらく粘ったものの、最終的にはあきらめて工場を売却し、繊維事業からは手を引いた
この結果、再建を図っていた時期に投入した資本からは、まったくと言っていいほど利益を上げることができなかった
特別に優良な企業を、妥当か割安な価格で買う
これ以降、バフェットは投資のスタイルを変えていく
「厳選した優良な企業が、妥当か割安な水準の時にだけ買う」というものに
優良な企業とは、「多くの資本を用いて、非常に高い利益率を上げられる企業」だと定義している
利益率が高くても用いる資本が少ないと、規模の拡大が図られないのでそこまで優良ではない
多くの資本を用いることができれば、売上と利益の規模が拡大され、株式の資産価値は向上していく
つまりは、経営者の事業への投資能力が非常に高く、利益を出しやすい業種に属する企業に限って、株式を購入するようになったのだ
また、事業の内容が理解しやすく、優位性を長期に渡って維持できる可能性が高い、というのも条件についている
そのような企業は稀有な存在で、しかも財務状態がよく、妥当か割安な水準にある時しか買わないと決めているので、投資機会が少なくなる
こうした方針を立てた結果、バフェットは特別に優良な投資案件しか扱わなくなった
そして買う時には大量に買い付けるので、集中投資をするようになったのである
変化の理由
バフェットがこのようにスタイルを変えたのは、バークシャー・ハサウェイの失敗から学んだからなのだろう
単に割安という理由で買うと、事業がダメになっている企業を買ってしまうことにもなる
そのような企業は維持するだけでも追加で資本を投入しなければならなくなるが、利益率が低いのでろくに回収できず、無駄に時間とお金を費やすことになってしまう
なので資本を運用する能力と利益率が高く、ブランド力があったり地域独占力があったりして、長期的に地位を維持できそうな企業に投資した方がよい
そういった企業でも高値で買えば利益が少なくなるので、妥当か割安な水準で買う
そのように切り替えていったのだ
その結果として、バフェットは世界でも1、2を争う大富豪になることができた
それにはアメリカの経済が長期的に高い水準で成長し続けたことが背景にあるが、それを馬だとすると、バフェットは特別に優秀な騎手だったということになる
バフェットは初めから偉大だったわけではなく、変化することによって偉大な投資家になったのだ
失敗から学んで行動を最適化するのは、どの分野においても、優れた成果を出す上で欠かせない取り組みなのだろう

